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AI需要で端末が高騰、買い替え判断はどう変わるか

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ざっくりまとめ

  • AI向けRAM需要の急増でメモリ価格が高騰。IDCはスマートフォンの平均販売価格が2026年に14%上昇して過去最高の523ドルに達すると予測している
  • MacBook ProはRAM不足を理由に旧モデル比で最大400ドル値上がり。Counterpointは価格高騰の影響が2027年後半まで続くと見ている
  • 修理しやすさが買い替え判断の軸になりつつある。MacBook Neoはバッテリー交換のしやすさでiFixitから10点中6点を獲得し、約14年ぶりの高評価となった

端末が高くなっている、その理由はAIにある

スマートフォンもノートPCも、ここ数ヶ月で目に見えて値上がりしている。背景にあるのはRAM(メモリ)の供給不足だ。生成AIの普及でデータセンターとAI対応PCへのRAM需要が急増し、スマートフォン向けのメモリ部材まで価格が押し上げられている。

IDCの予測によれば、2026年のスマートフォン平均販売価格は前年比14%上昇し、523ドルと過去最高水準に達する見通しだ。同時に出荷台数は12.9%減少し、2025年の12.6億台から11.2億台へと落ち込むと見られている。Memory shortage could cause the biggest dip in smartphone shipments in over a decade

PCも同じ構図だ。AppleはRAM不足を理由に2026年3月発表のMacBook Proの価格を全モデルで引き上げた。M5 Pro搭載14インチは旧M4 Pro比で200ドル高い2,199ドルから、M5 Max搭載モデルは400ドル高の3,599ドルからとなった。The new MacBook Pro laptops are as much as $400 more expensive than their predecessors. Thank the RAM shortage.

IDCはRAM価格が2027年中頃までに安定すると見込んでいるが、Counterpointは影響が2027年後半まで続くと予測する。少なくとも1〜2年は「端末が高い時代」が続く前提で、購入計画を見直す必要がある。

RAMショックによるスマートフォン市場への影響(2026年予測)
価格上昇 出荷減少 +20% +10% 0% -10% -20% +14% +10〜20% -12.9% -10.5% -13.1% -20% -20%以上 523ドルへ 11.2億台へ 平均販売価格 (ASP) Android OEM 一部製品 世界出荷台数 中国出荷 アジア太平洋 (日本除く) サブ$200 セグメント 中東・アフリカ 出荷 -20% -10% 0% +10% +20% +14% +10〜20% -12.9% -10.5% -13.1% -20% -20%以上 523ドルへ 11.2億台へ 平均販売価格 Android OEM 世界出荷台数 中国出荷 アジア太平洋 サブ$200帯 中東・アフリカ
生成AI普及によるRAM価格高騰が、端末価格の上昇と出荷台数の減少を引き起こしている。

誰が一番打撃を受けるか

値上がりの影響は均一ではない。Counterpointは200ドル未満のスマートフォンセグメントが20%縮小すると予測しており、エントリーからミッドレンジにかけての層が最も打撃を受ける。

理由は部材の世代差にある。低価格帯のスマートフォンが使うLPDDR4メモリ(旧世代の低消費電力メモリ規格)の供給が予想より速く縮小しており、安い部材を調達できなくなっている。Nothingの共同創業者兼CEOのCarl Pei氏は「ブランドは価格を30%以上引き上げるか、仕様を格下げするかの選択を迫られている」と明言した。

エントリー〜ミッドティアの市場は20%以上縮小する可能性がある。— Carl Pei(Nothing CEO)

Counterpointは2026年1月時点で一部のAndroid OEMのラインナップにおいて10〜20%の価格上昇をすでに観測している。「これから上がるかもしれない」ではなく、現時点で起きている話だ。

プレミアムセグメントは相対的に影響が少ないとCounterpointは述べているが、それはハイエンド機の絶対価格が下がることを意味しない。もともと高い端末がさらに高くなる中で、「少し安い選択肢」が消えていく。

地域別では日本を除くアジア太平洋地域で13.1%減、中国で10.5%減と予測されており、アジア市場への影響は特に大きい。日本市場も無縁ではないと考えておくべきだろう。

「修理できる端末」が資産になる

端末が高くなれば、1台を長く使う価値が上がる。修理のしやすさが、購入判断の重要な軸になってきた。

2026年3月、iFixitはMacBook Neoの分解レポートを公開し、「約14年ぶりに最も修理しやすいMacBook」と評価した。スコアは10点満点中6点。数字だけ見ると平凡だが、iFixit自身が「MacBookに対しては強いスコア」と述べている点が重要だ。The MacBook Neo is 'the most repairable MacBook' in years, according to iFixit

比較対象は2012年のRetina Display MacBook Proで、そのスコアは10点満点中1点だった。Appleはその年の再設計以降、バッテリーを含む多くの部品を接着剤で固定する方針を取り続けてきた。MacBook Neoはその流れを変えた。

何が具体的に変わったか

バッテリーはトレイに収められ、18本のネジで固定されている。接着剤ではなくネジ留めにしたことで、交換の手間が大きく下がった。ポートはモジュール式、ディスプレイも交換しやすい構造になっている。iFixitは内部レイアウトを「異例に合理的」と表現した。

「最初に故障しやすい部品が、長年のMacBookの中で最も交換しやすい位置にある」というiFixitの評価は、長期使用の現実に即している。バッテリーは消耗品で、3〜4年使えば容量が落ちる。そこだけ交換できれば、本体を丸ごと買い替えずに済む。

ただし、スペックのアップグレードはできない

一点だけ留意が必要だ。MacBook Neoでもメモリとストレージは半田付けされており、購入後のアップグレードは不可能だ。修理しやすくなったことと、スペックを後から増やせることは別の話として切り分けておく必要がある。購入時のメモリ選択が、そのまま端末の寿命を決める。

MacBook Neoと2012年モデルの修理しやすさ比較
比較項目 MacBook Neo 2012年 Retinaモデル iFixitスコア 6 / 10 1 / 10 バッテリー固定 ネジ留め (18本) 接着剤 ポート構造 モジュール式 ディスプレイ 交換しやすい メモリ / ストレージ 半田付け (交換不可) iFixitスコア MacBook Neo 6 / 10 2012年 Retina 1 / 10 バッテリー固定 MacBook Neo ネジ留め (18本) 2012年 Retina 接着剤 ポート構造 MacBook Neo モジュール式 2012年 Retina ディスプレイ MacBook Neo 交換しやすい 2012年 Retina メモリ / ストレージ MacBook Neo 半田付け (交換不可) 2012年 Retina
※iFixitスコアは10点満点で高いほど修理しやすい。2012年モデルの不明項目は「ー」とした。

仕事目線での買い替え判断

「今すぐ買うべきか、待つべきか」への答えは、使用目的と現在の端末の状態で変わる。ただし、判断の軸は整理できる。

AI機能を業務で使うなら、メモリは多めに買う

MacBook ProのM5 Proチップについて、AppleはAI向けのピークGPUコンピュートが前世代比4倍超と述べている。ローカルで動くAI処理はメモリを大量に消費する。ブラウザで使うだけなら関係ないが、コード生成・画像処理・音声認識などをオフラインや高速で走らせたい場合、メモリが少ない機種は早期に陳腐化する。

半田付けで後から増やせない以上、購入時に「今の用途の1.5倍」を目安にメモリを選ぶのが現実的だ。端末が高くなっている今、余裕のない構成で2年後に買い替えるより、最初に余裕を持たせたほうがトータルコストは低くなりやすい。

スマートフォンは「2世代前のハイエンド」が狙い目になる

Counterpointは、プレミアムスマートフォンが今回の価格上昇の影響を相対的に受けにくいと指摘している。裏を返せば、旧世代のハイエンド機が在庫処分で値下がりするタイミングが出やすくなる。エントリーからミッドレンジの選択肢が縮小する中で、1〜2世代前のプレミアム機を探す戦略は合理的だ。

修理しやすさを購入基準に加える

iFixitのスコアは端末選びの補助線になる。バッテリー交換が容易な端末を選べば、3〜5年の使用期間中に修理で乗り切れる確率が上がる。端末価格が上がるほど、1台を長く使うコストメリットが大きくなるという単純な算数だ。

まとめ

RAMショックは2027年後半まで続く見通しで、端末価格の高止まりは当面の前提として扱うべき状況にある。次に端末を選ぶ際の判断基準は三つだ。スマートフォンなら200ドル未満のセグメントを避け、旧世代ハイエンド機の値下がりを狙う。PCなら購入時のメモリ選択に慎重になり、用途の1.5倍を目安にする。そして機種を問わず、iFixitスコアで修理しやすさを確認する。高くなった端末を長く使い切る視点が、これからの買い替え判断の起点になる。